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日本歯科医学会学術講演会

2022.05.16



博物館人のコロナ対応:いまこそ博物館!新しい価値観で好奇心を揺さぶる古生物展示会を作る!!

国立科学博物館地学研究部 木村由莉

国立科学博物館では 2022 年 7 月中旬に開幕する特別展「化石ハンター展」を予定している.
サイの歯化石しか発見されていなかった不毛な土地さらにはアジアの不安定な政治状況という二重の逆風の中,今からちょうど 100 年前に恐竜の卵化石を発見し世界中を驚かせたアメリカ自然史博物館の中央アジア探検隊にスポットを当てた内容である.特別展示はその名の通り,作り手にとっても特別な空間であり,数年がかりで構想するのだが,本展準備期間とコロナウイルス感染対策のロックダウン措置が重なり海外主要博物館との交渉が事実上不可能となってしまった.

これまでにない状況下において,「多くの人が来館し,めずらしい標本を間近で見ることができる」という博物館の価値観が普遍的でないことや東京で開催することの経済的なリスクが顕在化した一方,オンライン授業やネット配信のコンテンツの需要は高まり,好奇心や探究心を育む場としての博物館の役割が重要であることは明確になった.

本講演では,みなさんの童心を対象に(1)大幅改変を余儀なくされた本展のテーマ性,(2)逆転の発想で再構成したストーリー,(3)本展の”sneakpeak”の3点について紹介する.

化石ハンターとは「化石になった生物を地層から探し出す人物」であり,科学系博物館としてはめずらしく人物に焦点を当てた展示会となる.発掘された化石によって太古の生命進化を解明するための手がかりが得られ,その成果が世代を渡って受け継がれることで新説にたどり着くというプロセスを示す.本展では,上記の中央アジア探検隊テーマを半分以下に絞り,その代わりとして世界初の紹介となる「アウト・オブ・チベット説」を取り上げることにした.

これは 2011 年に初めて提唱された,“アイス・エイジ”の大型獣の起源に迫る新説である.中国の研究チームが発見したコエロドンタ属(ケブカサイのグループ)の頭骨化石がきっかけとなっており,後頭部の反りが弱いことや左右の鼻を分ける隔壁の骨化の程度が弱いなど原始的な特徴が見られ,原始的な新種としてチベットケサイ (Coelodontathibetana)と名付けられた.

これによりケブカサイ(C. antiquitatis)の祖先的な種が標高の高いチベット高原で進化したことが明らかになったのである.
これまでに多くの既存研究によって更新世末(“アイス・エイジ”の終わり)の大型獣の絶滅について議論されてきたが,起源に迫った研究は皆無であった.まさに逆転の発想から提唱された説を本展で取り上げることで,博物館人として昨今の社会情勢を応援するものになると確信している.

さあ冒険の旅に出かけよう!


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